1月、クライアントの重役に誘われて、家族3人で小樽に3日間の旅をしてきました。今日はその旅の話と、「やってみないとわからない、を経営者として日常に持ち帰る方法」について書いてみます。

想像以上の雪でした。家族3人、現地に着いてからスノーブーツを買い足すレベル。スーツケースに入れたウインタージャケットも、東京の冬の感覚で持ってきたら全然足りませんでした。

タクシーで市内へ、寿司、ステンドグラス、Kiroroでスキー。北海道の冬を3日間にぎゅっと詰め込んだ、密度の高い旅になりました。

千歳から小樽へ、雪の量に驚く

新千歳空港に着いた瞬間から、雪の量が違います。空港の駐車場ですら、車の屋根が見えないくらい雪に埋もれている。

東京から行くと、まず「これは別の国だ」と思います。同じ日本の中で、これだけ景色が変わる場所はそう多くない。

タクシーで市内へ向かう道、両側に雪の壁。除雪された道路の左右に、人の背丈ほどの雪が積み上がっている。「除雪する」という行為が、毎日の重要な仕事として成立している社会。これは、東京で暮らしているとピンと来ない感覚です。

現地でスノーブーツを家族3人分買い足しました。これがあるかないかで、滞在中の快適さが完全に変わります。「現地で必要なものを現地で買う」のは、海外旅行の鉄則ですが、北海道もある意味海外です。

ステンドグラスの背景に、引き込まれる時間

小樽はガラスの街です。教会や美術館で、ステンドグラスが至るところにあります。

美術館では、ガラスそのものの美しさだけじゃなく、その作品ができた背景や歴史に引き込まれました。誰がどんな状況で、どんな技術で作ったか——解説を読んでいると、知らないうちに時間が過ぎている。

あるステンドグラスは、19世紀末のヨーロッパで作られたもので、戦争を経て何度か手を変えながら、最終的に小樽に来た、という来歴がありました。物の歴史を辿ると、その物が「物」じゃなくて「時間」に見えてきます。

教会の中で、外の雪明かりが差し込むステンドグラスを見ていました。色が床に落ちて、絨毯みたいに広がる。光の入り方が時間で変わるから、見るたびに違います。

美術品は「物」だけじゃなく、その後ろにある時間と人を含めて見ると、急に立体的になる。これは経営の見方にも近いと感じます。会社も、製品も、ブランドも、その後ろの時間と人を見ないと、本質が見えない。表面のスペックだけ見て競合分析しても、見落とすものが多すぎます。

ステンドグラスの背景に、引き込まれる時間
小樽のステンドグラス。光の入り方が時間で変わる。
ステンドグラス美術館の祭壇
美術館の祭壇前。19世紀末のステンドグラスが、3面に並ぶ。

「なると」のざんぎと、若鶏半身揚げのデカさ

市内で寄ったのが「なると」。北海道の有名なチキンの店です。

店先の大きな看板に、ざんぎの絵と若鶏半身揚げの絵、そして今日の日付が手書きで書いてある。「2026年1月10日」。こういう温度感、好きですね。デジタル全盛のこの時代に、毎日手書きで日付を書き換える、というのが、店の人柄を表しています。

ざんぎは、唐揚げの元祖と言われます。下味がしっかりついていて、衣が薄め、鶏肉そのものの味が前に出る。家で作る唐揚げとは、味の方向性がぜんぜん違います。

若鶏半身揚げが本当にデカい。鶏の半分がそのまま揚がっている、というシンプルなメニューですが、ボリュームが想像以上です。1人で食べきるのは、ちょっと諦めました。家族でシェアして、それでも残った。

店内には地元の人と観光客が半々。地元の人が普通に通っている店、というのが、信頼の指標です。

「なると」のざんぎと、若鶏半身揚げのデカさ
なるとの看板。雪、ざんぎ、若鶏半身揚げ、手書きの日付。
なると本店の外観、雪の街並み
なると本店の外観。雪の歩道、店、観光客と地元の人。

寿司、産地で食べると別物

夜は寿司屋で、北海道らしい握りを食べました。

うに、いくら、まぐろ、エビ、貝。素材の違いがそのまま味の違いになる、シンプルで強いやつです。

うには、東京で食べるそれとは別物。甘みが違う、苦味の少なさが違う、口の中で溶ける速度が違う。「産地の食材」は、東京に運ばれてくる過程で何かを失っている、というのが、現地で食べると分かります。

いくらは、粒の弾力と中の旨味が、噛んだ瞬間に広がる。「ぷちっ」という音と、塩味と魚の旨味が同時に来る感覚は、産地でしか体験できません。

東京の寿司もいいけれど、産地で食べると、やっぱり違う。「美味しい」を超えて、「食材そのものを食べている」という感覚が出ます。

寿司、産地で食べる味
小樽の寿司。北海道らしい握りが並ぶ。

Kiroroで5年ぶりのスキー、雪質の違い

Kiroroでは、子供にそりをデビューさせつつ、午後の2時間だけ自分も滑りに出ました。

5年ぶりのスキーです。レンタルでブーツを履いた瞬間、足が記憶していて、ちょっと驚きました。体は意外と覚えている。

リフトを降りて、滑り出す。最初の5回くらいは慎重に。10回目くらいから、体の動きが思い出されてくる。雪質が良くて、エッジがしっかり効く。大回りも小回りも、思った以上に思い通りに滑れました。

Kiroroの雪質は、本州のスキー場とは別物です。粉雪というか、エッジが食い込む感触が違う。これに慣れた体だと、本州の湿った雪では物足りなくなる、というのは、よく言われる話。

子供はそりで雪の斜面を何度も滑り降りていました。途中で転んで、雪まみれになって、それでも笑っている。雪との初対面、これは確実に記憶に残るシーンです。

Kiroroで家族そろってスキー&そり
Kiroroのトイレの鏡で。スキー帰りに家族で1枚。
Kiroro玄関のマスコット人形と家族
Kiroro玄関のマスコット犬の前で1枚。子供が大ハシャギ。

やってみないとわからない、を経営に持ち帰る

スキーは足裏とバランスの感覚が重要で、年間どれだけ滑走日数を稼げるかと、しっかり課題を決めて練習に取り組めるかで、上達が決まります。それが分かっているからこそ、「もう滑走日数を確保できない」と諦めていた部分がありました。

当時のように滑れないのは目に見えているし、滑っても自分の滑りに失望するのが怖い。だから、スキーに行く気がじわじわ失せていた、というのが正直なところでした。

ところが今回、滑ってみたら、意外と滑れた。これは新発見でした。「やってみないとわからない」というのは、当たり前のことだけど、改めて感じる機会は意外と少ない。

経営でも同じことがあります。「あれはもう難しい」「これはもう間に合わない」と、頭で結論を出してしまう癖が、忙しい時期ほど強くなる。実際にやってみたら、意外と進む、ということが、本当はもっと多いはずです。

経験を積むほど、「やる前に判断する」力は上がります。これは効率的ですが、同時に「やる前に諦める」量も増える。バランスを取るには、定期的に「やる前の判断を疑う機会」を意識的に作る必要がある。今回のスキーは、私にとってそういう機会になりました。

この発見は、今回の旅の最大の収穫だったかもしれません。

雪の運河、保存するという選択

翌日、雪の中で運河沿いを歩きました。

雪と、古いレンガ造りの倉庫と、運河。「画になる景色」を、ちゃんと残してきた街です。

「保存する」というのは、放っておくことじゃなくて、能動的に手をかけ続けること。誰かが意思を持って、何度も手入れをして、初めて景色は維持される。会社のブランドも、文化も、同じだと思います。

倉庫の壁面のレンガは、寒さで欠けやすい。それを補修し続けてきた人がいる。雪を毎日除けてきた人がいる。観光客に見えるのは「景色」だけですが、その後ろにある「維持の手間」を想像できると、街の見方が変わります。

帰る前にもう一軒、思いがけない一皿

千歳に向かう前にもう一軒、ふらっと入った居酒屋で、北海道らしいスケールの魚の頭の刺身が出てきました。何の魚か聞きそびれましたが、初めて見る盛り付けで、思わず写真を撮ってしまった一皿です。

旅先のラスト一食って、計画になかったほうがむしろ記憶に残ります。「次回はここに来よう」というメモが、こういう偶然から生まれます。

北海道の居酒屋で、大きな魚の頭の刺身
帰る前にふらっと入った店で。何の魚か分からないまま、写真だけ撮ってしまった豪快な一皿。

千歳空港から東京に戻って、寒さの違いに笑いました。

「やってみないとわからない」という当たり前を、これから先、もう少し信じてみる——というのが、今回の旅で持ち帰った宿題です。

では、東京でも一つ、諦めかけていたものに手を出してみましょうか。

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