結論から書きます。大阪・関西万博は、最後の1ヶ月で約700万人が駆け込み入場しました。私自身、その「最後に動いた一人」でした。今日はこのデータから、「経営における逆張りの判断軸」について整理してみます。
せっかくならば一度は行っておこうと思い、終了直前で駆け込みました。チケットの獲得は難しかったですが、なんとか粘って3人分を確保。京都にも寄って、鴨川の川床でご飯を食べる、という家族2泊3日の旅程です。
旅自体も楽しかったのですが、それ以上に「なぜ前半は閑散としていて、後半に殺到したのか」というデータが、経営判断のメタファーとして示唆的でした。順に書いていきます。
大屋根リング、木造で攻めた本気のスケール
万博の入口で、まず「大屋根リング」を見上げます。
木造でこの規模を作るという発想自体が、すでに勝っているんですよね。日本の木造建築の伝統を、現代のスケールで再解釈した感じ。
上に登って歩くと、会場全体が俯瞰で見える。「全体を見られる」という体験は、想像以上にテンションが上がります。これは、経営でも全く同じ。「自分の事業を上から俯瞰して見る時間」がない経営者は、判断が局所最適に寄りがちです。万博のリングと同じで、登る足場を自分で作る必要があります。
前半ガラガラ、後半殺到——入場者推移の極端さ
今回の万博は、データで見るとかなり面白い動きをしました。
公式発表(EXPO 2025 大阪・関西万博)によると、最終的な累計来場者数は 2,902万人(AD証込み、一般来場者は2,558万人)。1日平均は15.8万人。ですが、この数字に至るまでの推移が極端です。
100万人到達が4月23日(開幕10日後)。500万人は5月26日。1000万人は6月29日。中盤までは、想定よりかなりスローペースでした。前半に行った人の多くが「ガラガラだった」と語っています。
ところが、1500万人は8月6日、2000万人が9月5日、2500万人は9月27日——後半になるほど、急加速で人が増えた。10月13日の終了時点で2,902万人。最後の1ヶ月で約700万人が来場した計算になります。全体の約25%が、終わりの1ヶ月に集中した、ということです。
逆張りで取るポジション、その価値
私自身は、終わりが近づいてきてから慌てて行ったタイプです。前半に「ガラガラ」と聞いていたから、混むまで待つことにしていました。
結果として、めちゃくちゃ混んでいた。並ぶし、暑いし、歩く。じゃあ前半に行っておけばよかったのか、というと、たぶんそうでもありません。当時の自分が「行く理由」を見つけられなかったから、行かなかった。これは事実として受け止めるしかない。
ここで思うのは、世間一般の動きに逆らって、価値あるポジションを取る——いわゆる 逆張りの能力 の話です。前半に「今ガラガラだから、ゆっくり見られる」と判断して動ける人は、確実に得をした。先読みであり、世間のズレを恐れずに動く能力でもあります。
ビジネスでも、これは非常に重要なスキルです。みんなが「いまホット」と言うものに乗ると、追い風はあるけど超過利潤は取りにくい。みんなが「もう終わりだ」と言うところに残っているチャンスをすくえる人が、結果的に勝ちます。投資の世界で言えばバリュー投資の発想に近いですし、事業でも「衰退領域に残る顧客需要」を狙う戦略は実証されているアプローチです。
ただし、常に逆張りすればいいわけではない
難しいのは、常に逆張りすればいい、というものではないことです。
群衆が間違っていることもあれば、群衆が先に正しい答えに着いていることもある。「みんなと違う」という事実だけで、自分が正しい根拠にはなりません。逆張り信者になると、これを忘れます。
深く考えると、最初は得策に見えなくても、実は得策、という選択肢が、たまにある。これを見つけるには、自分の論理に対して、ある程度の確信と、検証する地力がいります。「みんなと違うから正解」ではなく、「自分なりに考え抜いたから、結果的にみんなと違う結論になった」という順序が大事です。
こういうポイントを見つけて、自分の論理を信じてベットする。これを繰り返すことで、会社は少しずつ大きくなっていきます。1人法人で経営をしていると、この「自分の論理で逆を行く」判断を、誰のお墨付きもなしに下す必要が頻繁にあります。だからこそ、自分の判断軸の精度を、定期的に点検することが大事だと感じています。
京都・鴨川と川床、一気に時間軸が変わる
翌日は京都に移動しました。
鴨川沿いの川床(納涼床)に上がって、ご飯を食べる。窓越しに川と山が見える、日本の夏のクラシックな景色です。
万博のスケールから、いきなり京都の静けさに切り替わる。この切り替わりの強さが、関西の魅力だと思います。同じ国の中で、500年前と現代を1日で行き来できる。これは旅としてかなり贅沢な体験です。
京都の街は、混ざり方が自然
京都は路地を歩くだけで楽しい街です。
古い建物と、新しいカフェと、観光客と、地元の人が、無理なく混ざっています。「混ざり方が自然」というのは、街がずっと積み重ねてきた歴史の結果。一夜では真似できないものです。
ブランドや組織の文化も、これと同じだと感じます。混ぜようとして混ぜたものは違和感が残る。長い時間をかけて、自然に混ざったものだけが、訪れる人にとって心地良い。組織を作るときも、「正解の文化を導入する」より「時間をかけて積み重ねる」ほうが、結果的にいい場所になる、ということを、京都の街は教えてくれます。
新幹線の中で、最後の万博の人混みを思い出していました。
前半に行っていれば、もっと余裕を持って楽しめたかもしれない。ですが、結局は「行くタイミング」も自分の判断軸の表れです。後悔しても仕方がない。
次は、誰よりも早く動ける機会を、もう少し見極める意識で生きてみよう——というのが、今回の旅で持ち帰った宿題です。
では、次の判断のタイミングを、見落とさないように。
Sources / 参考文献
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